大判例

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東京地方裁判所 昭和42年(借チ)1015号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔決定理由〕一、申立人の申立(以下本件申立という)の要旨は「申立人は相手方から東京都杉並区阿佐谷北一丁目三三七番五号宅地九〇・九〇平方米(二七・五坪以下本件土地という)を増改築制限の特約付きで賃借し、その地上に家屋番号八一号木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建居宅三九・六六平方米(一二坪)現況四七・九三平方米(一四・五坪、以下本件建物という)を所有してきたが、今回右平家建の建物上に木造瓦葺二六・四四平方米(八坪)の二階部分を増築すべく計画し(別紙図面赤線部分)相手方にその承諾を求めたがそれに応じない。よつて、右につき相手方の承諾に代る許可の裁判を求める(もし右申立の位置ではそれが認められない場合には、第二次的に、別紙図面青線部分の位置に右と同一面積で屋根を片流れにして増築することを許可する旨の裁判を求める)」というのであり、相手方の答弁は「相手方の居宅は本件土地の北側に接して建てられているため、申立人がその申立のような二階を増築すると、相手方の住居は全くの日蔭になるから、そのいずれをも承諾することができない。最大限譲歩しても、承諾出来る範囲は現在の建物の西側に寄せて巾と奥行きそれぞれ四・五四五米(二・五間)、二〇・六六平方米(六・二五坪)部分(別紙図面赤斜線部分)の増築に限る。よつて、申立人の本件増築許可の申立は棄却する旨の裁判を求める」というのである。

二、本件で調べた資料によれば次の事実を認めることができる。

本件土地および現在相手方の居宅がある北側隣接土地合わせて二六四・四六平方米(八〇坪)ほどは、もと横川金五郎の所有であつたところ、相手方がそれ全部を借り受け、まず昭和二年頃本件土地上に本件建物を建てて居住し、のち手狭になつたので北側に現在の居宅を建てて移り、右本件建物は貸家にした。だが、戦後の混乱時にその管理が面倒なので、本件申立のようなことが起ることを予測せず右建物ならびに本件土地賃借権を三井正夫に譲渡し、その後右三井より再びそれを譲受けようとして交渉もしたが、右同人は昭和三一年五月八日頃右本件建物ならびに本件土地賃借権を申立人に譲渡した。相手方はその後の昭和三四年右横川から本件土地およびこれの北側に隣接する相手方の居宅のある部分の土地を買受け、同年六月一日申立人に対し本件土地を非堅固の建物所有の目的、その日より期間二〇年、申立人が本件建物を増改築するときには相手方の承諾を受けることという条件で賃貸した。本件土地には建築法規上住居地域、第九種空地々区の制限があるが、本件申立にかかる増改築計画はいずれも右制限の範囲内であるしその他本件土地の利用上支障となる点は認められない。ところで、本件申立のように増改築の承諾に代る許可の裁判をする場合には、一切の事情として当該借地の隣地との関係を考慮することを必要とするが、本件土地の道路をへだてた南側および東側、西側についてはいずれも格別の問題はないけれども、北側について相手方の住居地が本件土地のほぼ真北に接しており、その住居の位置は借地人の現存建物に最も近いところで約三・六〇米の間隔、最も離れているところで約六・二〇米の間隔であり、地形がやや傾斜し、相手方の居宅の方が若干低いこともあつて、借地人たる申立人の建物が平家建である現況下でも相手方の居宅では日照が充分でないことがうかがわれ、もし本件申立の計画どおりに二階部分の増築が行われるならば、本件土地の北側に位置する相手方居宅では二階部分には若干日が当るにしても階下部分ではほとんど日照が得られない状況になると推測される。従つて、本件土地の道路を隔てた南側には既に二階建建物があり、日照の関係から申立人としては出来得る限り二階の増築部分の広いことの望ましいことはうかがわれるのであるが、隣地居住者である右相手方の不便も考慮するならば、今回なされるところの右申立人の増築には自から最少限の制約が加えられるべきだと考えられる。そしてそのことは当事者間の利害調整をはかりながら紛争の合理的解決を企図する借地法八条の二第二項四項の趣旨から考えても肯認されるべきである。そこで本件土地と相手方の土地の各地形ならびに建物の位置等を基準に本件に顕れた一切の事情を考慮して本件申立の増築計画を検討するならば、同計画中東側部分を空け西側に寄せて既存の平家建建物上に奥行横巾とも各四・五四五米(二・五間)、面積二〇・六六平方米(六・二五坪)、屋根を片流れとする二階部分(別紙図面赤斜線部分)の増築を認めることが、最も適当であるというべきである。……従つて本件申立のうち、右の限度において増築を許可することとする。<以下略>(渋川満)

別紙

東京都杉並区阿佐谷北一丁目三三七審地家屋番号八一番木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建居宅三九・六六平方米(一二坪)現況四七・九三平方米(一四・五坪)上に、木造、日本瓦葺、屋根片流れ造り形式専用住宅二階部分二〇・六六平方米(六・五坪)の増築工事(その位置は別紙図面赤斜線部分参照)

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